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人工股関節置換術は、末期の変形性股関節症や大腿骨頚部骨折後などに行われる手術方法の1つです。末期の変形性股関節症では、関節の破壊により歩行障害や股関節の痛みなどが生じるため人工股関節の適応となります。また、大腿骨頚部骨折では骨折後に骨の癒合が起こりにくいため、人工股関節が選択される場合があります。
人工股関節には「コバルトクロム合金」や「チタン合金」といった金属が用いられ、一般的な耐用年数は20年前後と言われています。そのため、あまり若いときに手術を行ってしまうと再手術が必要になってしまうこともあり、年齢を考慮した手術方法の選択が重要になってきます。
また、人工股関節置換術を行うにあたっては次のような注意すべき合併症があります。
1.脱臼
軟部組織の修復が進み、股関節周囲の筋力が回復するまでは脱臼のリスクがあります。脱臼を防ぐためには術後にしっかりと筋力を回復させ、脱臼しやすい姿勢をとらないことが大切になります。
2.感染症
人工股関節置換術を受けた方の0.5%程度が何らかの感染症を起こすことがあると言われています。その危険因子として、肥満や糖尿病、炎症性疾患(関節リウマチなど)が関係していると言われています。
3.静脈血栓
股関節や膝関節の人工関節置換術では「肺血栓塞栓症」のリスクが高いとされていて、術後にはその予防が非常に大切になってきます。静脈血栓の予防のためには、弾性ストッキングの着用や抗凝固薬などを用いられます。
4.人工関節の緩み
経年的な変化として、人工関節の緩みや人工関節の破損などがあげられます。人工関節は年数が経過すると徐々に摩耗してきます。その摩耗した粉が骨を溶かしてしまうことで、人工関節の緩みが生じるようになります。
人工股関節置換術では「大腿筋膜張筋」や「中殿筋」といった筋や筋膜が切開されることが多く、それに伴って筋力低下も生じやすくなります。股関節周囲筋の筋力が十分に回復しないと、股関節のつまり感や可動域制限の原因になることもあるため、リハビリテーションでは早期から関節可動域や筋力トレーニングなどを行い、正常な歩行の獲得を目指します。また、人工股関節の脱臼を防ぐために生活指導や動作指導なども行っていきます。
人工股関節の耐用年数は約20年とされていますが、体重や運動量、骨の状態などによっても変わってきます。最近の人工股関節は、過度な負担をかけなければ30年以上もたせることも可能です。肥満や過活動、骨粗しょう症などは人工股関節の寿命を短くしてしまう危険性がありますので、自分の身体を管理していくことも重要な要素になってきます。