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大腿骨近位部の骨折は内側型と外側型に分けられ、その中でも外側型の骨折が大腿骨転子部骨折と呼ばれています。内側型の骨折では大腿骨頭が壊死に陥りやすいですが、外側型では大腿骨頭が壊死に陥る可能性は低くなります。高齢の女性で発生率が高く、若い方では頻度は少ない傾向にあります。
高齢者の転倒によるものが主な原因です。もともと骨粗しょう症を基盤としてもっている場合、転倒した際に骨折してしまう可能性が高くなります。特に女性の場合では、更年期以降の女性ホルモンの低下に伴い骨密度の低下が生じやすくなります。そのため、軽く転んだだけでも骨折が生じてしまうことがあります。若い方では、交通事故や高所からの転落などで起こることがありますが、頻度としては高くありません。
骨折した部位の激しい痛みが生じ、立ったり歩いたりといったことが難しくなります。転倒後に強い痛みを感じたり、体重をかけたときに痛みを感じたりした場合には、すぐに整形外科を受診されることをお勧めします。
レントゲン検査により、大腿骨の骨折の有無を確認します。大腿骨転子部骨折の分類には「Evans分類」が用いられ、骨折のタイプにより安定型と不安定型に分けられます。また、骨折線がはっきりしない場合や股関節の形状やを詳しく知りたい場合には、MRI検査やCT検査を行うこともあります。
ガイドラインより引用
大腿骨転子部骨折をされる方の多くが高齢者ということもあり、保存療法で長期間固定してしまうと、二次的に関節の硬さや筋力低下を助長してしまうといったリスクが生じてしまいます。そのため、一般的には手術療法を行うことが推奨されています。手術方法としては、プレートやスクリューで骨折部を固定を固定する場合と、人工骨頭という金属を挿入する場合があり、Evans分類でいうと前者はgroup1~2、後者はgroup3~4の場合に選択されます。
基礎疾患として骨粗しょう症がある場合には、骨密度を改善させるための薬物治療を行います。また、薬物療法だけでは骨粗しょう症の治療としては不十分で、一定の活動量の確保、カルシウムやビタミンDを含んだ食事の摂取、標準体重の維持などにも気をつけながら生活していく必要があります。
高齢者の場合、過度な安静は急速に筋力低下を生じさせてしまいます。また、関節の可動域制限も問題となることが多いため、術後のリスクに注意しながらなるべく早期に関節可動域訓練や筋力トレーニング、荷重練習を開始します。術後のリスクとしては、人工骨頭の場合には脱臼してしまう可能性があり、もしも脱臼してしまった場合には再手術をしなければならなくなります。また、足部に血栓ができてしまうとそれが心臓や脳にとんでしまい、脳塞栓や肺塞栓などの重篤な合併症が生じてしまうため、それらの管理にも注意を払いながらリハビリテーションを進めていきます。