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記憶とは、「物事を忘れずに覚えておくこと」「覚えておいた内容や経験を後で利用できること」などと説明されています。年齢とともに、これらの記憶に関する能力に不安を持つようになる方も少なくないのではないでしょうか。ここでは、記憶に関する情報と、記憶力を向上させるためのポイントについてお話させていただきます。
記憶力低下を感じるとまず不安になるのが認知症かと思われますが、記憶力の低下を引き起こす原因には様々なものがあります。主な原因として、以下のようなものが挙げられます。
・軽度認知障害(MCI)
・睡眠障害
・更年期障害
・服薬している薬の副作用
・アルコールの過剰摂取
・ストレス
・うつ
例えば、睡眠と記憶は深い関りがあるため、睡眠が障害されれば記憶も影響を受けます。また、アルコールの過剰摂取で脳が収縮してしまう人もいます。そして、ストレスやうつあるいは更年期なども記憶力に影響を与える可能性があると考えられています。
記憶と感覚には密接な関係があります。そのため、感覚器を刺激しながら記憶する方法は、集中力を乱さない範囲内であれば効果的な学習方法と言えます。感覚を刺激しながら記憶する代表的な方法には、次のようなものがあります。
例えば、英単語を覚える際に声を出しながら記憶することは有効な手段です。これは、耳からの聴覚刺激だけでなく、口元の動きや息づかいも含めて記憶を呼び覚ます手掛かりとなります。
参考書を目で追っているだけではなかなか覚えられなくても、耳で聞くことで記憶しやすくなることがあります。
勉強しているときに特徴的なにおいを嗅ぎながら勉強することも効果的です。例えば、勉強するときにはコーヒーや紅茶を飲む、変わった香りのする消しゴムを使うなども良いかもしれません。
記憶には、時間が経過するほど忘れていくという特徴があります。そのため、記憶を失わないために繰り返し復習したり、アウトプットしたりすることが重要になります。例えば、テストを受けたり問題集を解いたりなど、記憶を引き出そうとする機会を作ることも効果的です。
また、友達同士で一緒に勉強して、わからないところを教えあうという方法も有効です。お互いに教えあうことで、記憶している内容をアウトプットする機会が増えるので、記憶に定着しやすくなります。あるいは、人前で何かを発表することも記憶を整理しながら引き出すという難しい作業であるため、非常に効果的な記憶の練習方法といえます。
最近では、学校の授業でも「ワークショップ型授業」を取り入れているところも増えているようですが、整理された記憶を人と話しながらアウトプットすることは、覚えたことを引き出すためにとても良い練習になります。また、人前でプレゼンテーションをして人にわかりやすく伝えるということも効果的な学習方法であると考えられます。
エビングハウスの忘却曲線とは、ヘルマン・エビングハウスという人が自らを実験台にして、人はどれくらいの期間を経ると記憶したものを忘れてしまうのかについて実験しました。実験結果によると、3文字の意味のない文字列を覚えてから20分後には58%、1時間後には44%、9時間後には36%、1日後には33%と記憶の保持率が低下していました。
また、覚えたものを完全に忘れてしまう前に復習することで忘れにくくなるということがわかりました。ただ、毎日同じことだけを繰り返し覚えるには無理がありますし、効率も悪くなります。そのため、最初は翌日、次は3日後、その次は1週間後といった具合に、徐々に復習する期間を空けるようにすると効率よく勉強することができます。
反対に、記憶の定着という意味では最悪なのが一夜漬けです。テストの前日に一夜漬けをすればそこそこの点数はとれるかもしれませんが、その内容はすぐに忘れてしまうため効果的な勉強方法とはいえません。もしもテストのために一夜漬けをして覚えたなら、テストが終わってからすぐに反復して復習した方が良いでしょう。
横山医院 理学療法士 藤平 真二