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日本では、心不全で年間約7~8万人が亡くなられていると推定されています。心不全による年間死亡者数の割合は、心不全の重症度や治療状況によって異なります。一般的には、心不全全体の年間死亡率は7~8%程度ですが、重症度が高い場合(NYHA分類でⅢ度、Ⅳ度)では死亡率が20~30%に上昇します。また、急性心不全で入院した場合は入院中に約6%が亡くなられ、約22%が1年以内に亡くなられるというデータもあります。心不全は、がんなどの悪性疾患並みに予後が悪い病気とされており、早期発見及び早期治療が重要です。今回は、心不全に対して簡単にお話できればと思います。
心不全とは、心臓が血液を全身に十分に送り出すことができなくなった状態を指します。これは、心拍出量の低下によって酸素や栄養素が各組織に適切に供給されないことを意味し、結果として多様な症状が現れます。心不全とは疾患ではなく症候群であり、原因、進行度、患者背景によって多様な形態をとります。
原因分類
・器質的疾患:虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)や高血圧による左室肥大、弁膜症、心筋症など
・機能的要因:不整脈(心房細動など)、心臓の収縮・拡張機能低下など
・急性 vs 慢性
急性心不全は突然発症し、生命の危機を伴うこともあります。一方、慢性心不全は徐々に進行し、生活の質に影響を及ぼします。
・左心不全と右心不全
左心不全➝肺うっ血が主症状であり、呼吸困難、咳、起坐呼吸があります。
右心不全➝末梢のうっ血が主症状であり、下肢浮腫、頸静脈怒張、肝腫大があります。
・評価
NYHA分類(I~IV度)があり、日常生活での症状の重さによって分類されている評価の一部で、おもに治療方針の指標となります。
・呼吸困難(運動時から安静時へ進行)
・浮腫(特に下肢)
・夜間頻尿、乏尿、倦怠感、動悸
・頸静脈怒張、体重増加(体液貯留による)
これらの中でもよくみられる症状は以下のとおりです。
・浮腫:足だけでなく全体的に浮腫を認める事が多い
・体重増加:2kg/日以上は心不全の可能性大
・起座呼吸:寝ている時より起きている時の方が呼吸が楽
上記3点のいずれかでも症状がある場合は、早期の受診が必要と言われています。
・身体所見:心音、肺雑音、浮腫などの観察
・画像診断:心エコー(EF評価、壁運動)、胸部X線(肺うっ血、心拡大)
・血液検査:BNPやNT-proBNPの上昇は心不全の重症度判定に有用
心臓を患った場合、腎臓などの他の臓器症状も同時にでている事があるため、場合によっては同時に検査する事もあります。
・薬物療法
ACE阻害薬、β遮断薬、ARNI、利尿薬、鉱質コルチコイド受容体拮抗薬など
・生活指導
塩分・水分制限、体重管理、運動療法の導入(状態に応じて)
・心臓再同期療法(CRT)や補助人工心臓、移植
重症例では、デバイス治療や外科的介入が検討されることもあります
心不全は慢性疾患であり、急性増悪の予防や日常管理が非常に重要です。医師だけでなく、看護師、リハビリスタッフ、薬剤師、栄養士など多職種連携が不可欠です。特に、退院後の患者教育とフォローアップが再入院率の低減につながります。
【おわりに】
心不全は予後が悪く、早期発見が大事になります。重症化してしまえば予後が悪くなりますが、早期に発見できれば服薬や生活指導で大きく改善する病気です。近年でも多く見られている病気のため、少しでもおかしいと感じた時や症状があるという時には、受診をする事をお勧めします。
横山医院 理学療法士 小林 将之