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「膝が痛みだして、湿布や痛み止めを続けても、なかなか治らない…」
今回は、レントゲンでは見つけにくい膝の痛みの隠れた原因、「骨髄病変(Bone Marrow Lesion: BML)」についてお話しします。
骨髄病変とは、その名の通り骨の髄(ずい)に何らかの異常が起きている状態を指します。私たちの骨は、表面の硬い部分(皮質骨)と、その内側の海綿状の組織(海綿骨)でできており、この海綿骨の隙間を埋めるのが骨髄です。変形性膝関節症が進行すると、関節軟骨のすぐ下の骨(軟骨下骨)に小さな骨折が起きたり、血流が悪くなったりして、この骨髄に浮腫(むくみ)や炎症が起こることがあります。これが「骨髄病変」の正体です。つまり、骨髄病変は変形性膝関節症の進行に伴って発生することが多い病態と言えます。
しかし、レントゲンでは関節の隙間が狭くなっているといった「変形」は確認できますが、骨髄病変は映らないため見過ごされがちです。レントゲンの所見以上に疼痛が強いことが多く、超音波検査にて骨髄病変が起きている周囲には特徴的な異常血流を認めることがあります。また、投薬や注射等の治療を行っても痛みが改善してこないことが多く、その場合はMRIを撮影することにより確定診断することができます。
骨髄病変の最も特徴的な症状は、強い自発痛です。特に安静時や夜間にズキズキと痛むことが多く、「夜中に痛みで目が覚める」といった訴えもよく聞かれます。また、歩行時や階段の昇降時にも強い痛みを感じやすく、体重がかかる動作で痛みが悪化する傾向があります。この痛みは、軟骨の摩耗による痛みとは異なり、骨の内部から湧き出てくるような、より鋭い痛みであることが多いです。
骨髄病変の診断が下された場合、一般的な治療法としては以下のようなものがあります。
保存療法:
安静: 痛みが強い時期には、膝に負担をかけないように安静にすることが重要です。
投薬: 痛みや炎症を抑えるために、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などが処方されることがあります。
注射療法: 炎症を抑えるためのステロイド注射や、膝の滑りを良くするためのヒアルロン酸注射などが行われることもあります。リハビリテーション: 痛みが落ち着いてきたら、理学療法士の指導のもと、膝の負担を減らすための運動療法が行われることがあります。
これらの治療は痛みを緩和する効果が期待できますが、根本的な原因である骨髄内の血流改善や組織修復には直接働きかけるものではありません。そのため、痛みがなかなか改善しないケースも少なくありません。
長引く膝の痛みの根本原因にアプローチするために、近年注目されているのが「体外衝撃波治療」です。この治療法では、音速を超えて伝わる圧力の波(衝撃波)を体の外から患部に当てることで、以下のような効果が期待できます。
血流改善: 骨髄の血流を促進し、酸素や栄養が行き渡りやすくなります。
組織修復: 骨組織の修復力を高め、病変部を治癒に導きます。
鎮痛効果: 痛みを伝える神経に作用し、痛みを和らげます。
特に当院が導入している**「収束型体外衝撃波治療器」は、衝撃波を一点に集中させることができ、体の表面に影響を与えることなく、より深部の骨髄病変に直接アプローチ**することが可能です。従来の治療法では届きにくかった、痛みの震源地とも言える骨の内部に働きかけることで、根本的な改善を目指します。当院の体外衝撃波治療について、さらに詳しく知りたい方は、こちらのページもご覧ください。→ [当院の体外衝撃波治療について詳しくはこちら]
膝の痛みが長引いている場合、レントゲンだけではわからない骨髄病変が隠れている可能性があります。痛みの根本原因を正確に突き止め、それに適した治療を選択することが重要です。
当院では、内服、注射による従来の保存療法加え、必要に応じて体外衝撃波治療や理学療法士による個別のリハビリテーションも行い、痛みの改善と再発予防をサポートしています。
横山医院 理学療法士 明楽 豪