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痛みの原因となるストレス・不安・うつ病との関連性と注意点

【痛みとストレスの関係】

人にとって痛みはとても嫌な感覚であり、痛みがあるとストレスが溜まっているときと似たような体の反応を引き起こすことが知られています。痛みを感じてそれがストレスだと認識されると、脳の中の視床下部が興奮します。視床下部は急性反応としてストレスから身を守るべく、交感神経活動を活発にし、血圧や血糖値を上昇させます。視床下部は交感神経の活動を高めるほか、免疫に関するリンパ組織の働きを抑制したり、胃酸分泌を活発にしたりするなど様々な反応を引き起こします。

 

本来、これらの反応は体がエネルギー供給を効率よく受けるために考えられたシステムです。しかし、短期間ではとても効率の良いことでも、痛みストレスが長引けば高血糖や高血圧あるいは胃酸の過剰分泌など、ストレス反応と同じような状態を引き起こしてしまいます。

 

反対に、怒りや悲しみ、イライラなどのストレスが痛みをそのものの感受性を変えてしまうことも知られています。情動的ストレスを脳で感じると交感神経を亢進させ、副腎皮質に働きかけます。交感神経の活動が高まると「ノルアドレナリン」と呼ばれる物質が血中に放出され、痛みを感じる受容器や一部の侵害受容器(痛みを感じる神経)を刺激します。

 

ストレスで頭痛や腹痛がある女性のイラスト

 

【様々な痛みの要因について】

普通の状態では、痛みを感じる神経を少し刺激されたとしても実際に痛みを感じることはほとんどありません。しかし、もともと神経損傷や炎症などが存在すると交感神経に反応する受容器が新たに出現するため、痛みを感じるようになります。さらに、交感神経の活動が高まると血流の低下や筋緊張の亢進が起こり虚血状態となります。それにより発痛物質が蓄積されることでも痛みが強くなります。

 

組織の損傷や障害の大きさだけでなく、その痛みに対してどのように捉えているかどうかも重要なようです。例えば痛みを楽観的に捉えた場合では、不安や恐怖心は生まれないため、痛みは損傷や障害の程度とほぼ同程度の大きさのままとなります。

 

しかしながら、時には痛みに対して「自分の人生は台無しだ」とか「もう治らない」などの否定的でネガティブな感情が生まれたり、インターネット等で自分と類似した病気を見つけ「〇〇という病気に違いない」や「将来は寝たきりになる」など自分にとって都合の悪い情報ばかりを集めるような行動をとったりしてしまいます。このような自分を追い込んでしまう思考は破局的思考と呼ばれています。この思考によって痛みを増強さてしまっている場合は、病院に行っても解決策が無く、難治性の痛みとして取り扱われてしまいます。ネガティブな思考の結果、実際に痛みが増強すると「やはり自分は〇〇に違いない」という認識が強くなり改善がさらに難しくなっていきます。

 

不安に押しつぶされる男性のイラスト

 

【痛みとうつ病の関係】

では、もともと精神的な疾患を抱えている場合はどうでしょうか。不安が続いてうつ病などを発症するとセロトニン量が減少します。セロトニンとは神経伝達物質の一つで、痛みに対しては抑制方向に、気分は興奮方向に働きます。そのためセロトニン量が減少すると痛みは強く感じられ、気分は落ち込みます。もともと人間には痛みから逃れるための防御機構(自己鎮痛)が備わっており、特に痛みが強い時にはたくさんのセロトニンを放出して痛みを抑制します。しかし、うつ病などでセロトニンが抑制されれば自己鎮痛はおこりません。そのため、痛みや不安などの感情的ストレスが加わると、普段より痛みを強く感じることになるのです。

 

落ち込んでいる女性のイラスト

 

このように、痛みとストレスには密接な関係があります。慢性的な痛みを持っている方は、痛みとストレスの悪循環に陥っている可能性があります。情動的な、もしくは痛みによるストレスにより交感神経系の活動が高まり痛みが増幅し、それがまたストレスになっていくという悪循環に陥らないためにも、感情を乱さないようにすることも大事かもしれません。

 

横山医院 理学療法士  横山 麻希

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