医院ブログ
Blog
Blog
最近、「プロテイン」という言葉をよく聞くようになったと思いませんか?
今までは一部のアスリート向けのサプリメントというイメージでしたが、ここ数年で一気に一般化してきました。今ではコンビニにもプロテインバーやドリンク、アイス等かなりの種類が売られています。これは数年前には考えられないことでした。
「プロテインって何?」「プロテインって飲むと筋肉がつくの?」「身体に悪くない?」等様々な疑問をお持ちの方も少なくないのではないでしょうか。
そこで今回はプロテインに興味はあるけどよくわからないという向けに、プロテインの解説をしたいと思います。
こちらを読んでいただくと、以下のことがわかるようになります。
・プロテインの種類
・プロテインの飲み方と注意点
今後、もしプロテインを飲んでみようと考えている方の参考になる内容となっています。
ご興味があれば最後までお付き合い下さい。
プロテインとは直訳すると「たんぱく質」のことです。
つまりプロテインとはサプリメントの名称ではなく、栄養素の名前なのです。
特別なものではないので、一般的な食材でいうと肉、魚、乳製品、大豆製品等から普通に摂取できます。
商品として売っているプロテインは、たんぱく質を豊富に含んだ商品であるということになります。
では、そもそもたんぱく質はどのような役割があるのでしょうか。
身体は約60~70%は水分で構成されています。残り20%程度がたんぱく質で構成されており、皮膚、髪の毛、筋肉、爪、血液等の形成、ホルモンや免疫物質の調整等、様々な役割があります。これらの役割を見てみると、身体の基本的な部分の材料となっていることが分かるかと思います。
この点が、スポーツ選手が意識的に摂取する理由となっています。トレーニングをすると、その負荷によって筋肉や身体組織が損傷します。損傷が回復する過程で筋肥大や筋力向上が起こります。その際に、材料であるたんぱく質が十分にある状態を作っておくことは不可欠なことです。
特にトレーニングをしていない場合でも、人間の細胞は常に生まれ変わっているので、その材料となるたんぱく質が必要となります。材料不足の状態では、現状を維持することも難しくなってしまいます。次に具体的な必要量をみていきましょう。
たんぱく質の必要量は、年齢、性別、体重、活動量により異なります。
厚生労働省でまとめられている「日本人の食事摂取基準」が参考になると思います。
この基準によると推奨量は成人男性で1日60g、成人女性で1日50gとなっています。
実は、この量は成人にとってはサプリメントを用いなくても無理なく摂取可能な量です。しかし、食事内容の偏りや高齢で食事量が十分取れない等の理由により、十分にタンパク質が接種できていない方が多いことも事実です。特に要介護高齢者において20~40%、入院中の高齢者においては30~50%の割合で低栄養が起きていることが報告されています(ここでいう低栄養はたんぱく質以外の栄養素も含みます)。また、入院や要介護状態となっていない場合でも、高齢者の場合はフレイル予防のために運動とたんぱく質摂取が推奨されています。
参考にリンクを張っておきます。こちらには年齢、性別、疾病等に分類してたんぱく質以外の栄養素に関しても基準が示されています。ご興味があればご覧ください。
高強度の運動を行っている方は、こちらの基準よりも多めな体重1kgあたり1.2~2g程度のたんぱく質摂取が推奨されています。摂取量に幅があるのは、運動強度や内容に幅があるためです。体重×2gとなると70kgの方場合、たんぱく質の1日摂取量が140gとなり食事だけで摂取するのが難しくなってきます。そのため、アスリートは食事以外での補給方法としてプロテインを摂取しているのです。
ここからは、サプリメントとしてのプロテインについて解説していきます。
サプリメントとしてのプロテインを理解するには、「種類」「摂取方法」「注意点」の3点をおさえると良いです。
プロテイン=たんぱく質であることは既に述べてきました。プロテインは様々な原料から作られておりそれぞれ特徴があります。ここでは代表的なプロテインを簡単に紹介していきます。これから紹介する商品は、スポーツ用品店、ドラッグストア等でパウダー売っており、自分にあったものを選ぶことが出来ます。
原料は牛乳です。牛乳から乳脂肪分、この後出てくるカゼインを取り除いて作られています。特徴は吸収の早さです(約2時間)。そのため、運動直後や前の食事から時間が空きやすい起床直後の摂取が向いています。スポーツ選手が利用しているプロテインの多くは、このホエイプロテインです。
ホエイプロテインは、WPC(Whey protein Concentrate)とWPI(whey Protein Isolate)に分けられます。一般的なホエイプロテインはWPCの方です。WPIはWPCをさらに精製し、脂肪、糖質を除去し、たんぱく質含有量を高めたタイプです。
WPCタイプのプロテインは、たんぱく質含有比率が70~75%台のものがほとんどですが、WPIは85~90%、中には95%を越えるものも存在します。プロテインを摂取する目的は効率的にプロテインを摂取することなので、理にかなった商品といえます。ただし、WPCに比べ、価格はやや割高になります。さらに最近はWPHというタイプも普及してきましたが、まだまだ一般的ではないのでここでの紹介は割愛します。
原料は牛乳です。一般に乳固形分と呼ばれる成分の主成分でチーズやヨーグルトを固める作用があります。水溶性で吸収が早いホエイに対し、不溶性で吸収に時間がかかるという特徴があります(約8時間)。このゆっくりと持続的に身体に吸収されていくという特徴から就寝前に摂取し、睡眠中にも栄養を吸収することが可能となっています。
原料は大豆です。以前はプロテインといえば、ほとんどがソイプロテインでした。
特徴は吸収時間の長さで、カゼインほどではありませんが吸収まで5~6時間かかります。
また、ホエイ、カゼインと違い、牛乳由来ではないため、乳製品アレルギーがある方でも安心して摂取ができます。
現在コンビニ売られている森永のin barシリーズ、明治のsavasシリーズは、特に目にすることが多いと思います。これらのうちドリンク類に関しては、成分表示に牛乳由来のたんぱく質であるという以上の情報がないため詳細は不明ですが、ホエイとカゼインの混合であるものと思われます。また、in barシリーズのプロテインバーに関しては、乳成分に加え、ソイも混合しています。
プロテインには、プロテインパウダーで売っているタイプとコンビニで売られているようなプロテインを多く含んだ高たんぱく食品があることはここまででお分かりいただけたかと思います。たんぱく質1gあたりの価格でみた場合、圧倒的にパウダーで購入した方が割安となります。また、純粋にたんぱく質を摂取し余計なカロリーを摂取しないという意味においてもパウダーの方が適しています。
ただし、高たんぱく商品にもメリットとして袋を開ければすぐに摂取できるという手軽さがあります。たんぱく質を摂取して分解・吸収する際に糖質と一緒に摂取した方が効率が高いこともあるため、その点では理にかなっているともいえます。それぞれの特徴や利点を踏まえて自分にあったものを選択する必要があります。
既に「たんぱく質の必要量」の項で説明したとおり、少し意識してメニューを考えれば1日摂取量を取ることはそこまで難しくありません。食事で補えていれば、特に身体を動かす習慣がなければあえてサプリメントで追加で摂取する必要はありません。
しかし、不規則な食事パターンあるいは食事量を十分に取ることが出来ない場合もあると思います。その様な時には、サプリメントは必要な分を手軽に補える有効な手段となります。一般的なプロテインパウダーは、たんぱく質含有率が70%以上はあるので、30g摂取すれば一回に20g以上は摂取可能です。コンビニで売られているプロテインドリンクやプロテインバーも10~15g程度はたんぱく質が入っていますので、上手く食事に組み合わせたり、間食に入れることで1日摂取量を上手く満たすことが出来ます。
また1回の摂取量があまり多くなりすぎると吸収しきれず、せっかく摂取したたんぱく質が無駄になってしまうばかりか、腸内環境の悪化に結びついてしまうこともあるので、1回20~30g程度にしておくと良いでしょう。
原料が牛乳のタイプのプロテインを摂取した後、腹痛、お腹がゆるくなってしまう、下痢をしてしまうという方がいます。当てはまる方は乳糖不耐症の可能性があります。乳製品に含まれる乳糖を分解する酵素が体内に不十分な場合に起こります。程度の差はありますが、日本人の2/3は乳糖を十分に分解することができないと言われています。その様な場合はソイプロテインを選ぶか、ホエイプロテインでも乳糖が除去されているWPIを選ぶことで対処できます。
食事からたんぱく質を摂取すると、分解、吸収する過程で窒素代謝物が生成されます。正常な腎機能があれば、それを処理する糸球体が十分にあります。腎機能が低下してくると、減少した糸球体が処理能力を超えて処理しようとします。これは異常事態であり、残った糸球体の濾過能力落ちてしまうため、腎機能不全がある場合は負担軽減をするためにたんぱく質摂取量の制限を行う場合があります。
腎機能不全がある場合は、健康のためにと安易にたんぱく質を多量に摂取するとかえって、身体の状況を悪化させる可能性があるので、該当する場合は医師に相談することをお勧めします。
プロテインについて総論的に解説しました。
ひとつでも参考になるものがあれば幸いです。
横山医院 理学療法士 明樂 豪