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「ファシア」という言葉を最近テレビや新聞などで目にすることも多くなってきました。
ファシア(Fascia)とは「膜」のことであり、臓器、骨、筋肉、脂肪、靭帯、血管、神経などの組織を覆う膜の総称です。筋膜リリースでおなじみの「筋膜」もファシアの一つです。ファシアはすべての組織同士を分割し、かつ連結させています。ファシアが体を滑らかに動かしたり、支えたりしているおかげで、私たちの身体はいろいろな動きをすることが出来るのです。
ファシアはコラーゲンやエラスチンといった繊維質のタンパク質と水分で出来た網目状の組織で、この網目状をテンセグリティ―構造といいます。互いに引っ張り合って張力を保っており、多方向へ縮んだり伸びたりできます。この張力のバランスが崩れてくると姿勢や骨格の崩れにつながります。
ファシアに以下のような負荷がかかると伸張性や滑走性(滑りやすさ)が低下し、可動域制限(動かせる範囲が狭くなる)が起こります。
・ストレス
・運動不足
・同一姿勢の継続
・不良姿勢
・怪我や手術
・炎症
これらによりファシアが水分不足となり、‘よれ‘が生じると、隣り合った組織との動きが悪くなる「癒着」が起こります。
癒着を起こしたファシアには侵害受容器(痛みを感じる受容器)が集まりやすく、痛みを引き起こす原因となります。長時間のデスクワークやPC操作による肩こりや腰痛などはこれに当てはまり、筋膜性疼痛症候群(MPS)と呼ばれたりします。MPSとは、筋肉を包む膜「筋膜」の異常から起きる痛み・痺れなどの症状を起こす疾患で、日本では筋痛症とも呼ばれます。
筋疲労や血行不良を放置しておくとファシアが癒着を起こします。癒着を起こすとファシアに分布している侵害受容器が過敏になっていき、この過敏化した侵害受容器がトリガーポイントを形成していきます。
トリガーポイントとは発痛点という意味です。トリガーポイントはその箇所自体がしこりのようになっていて痛みを感じることもありますが、痛みを感じる場所としこりのある場所が異なる場合もあります。これを「関連痛」と呼びます。痛む場所を施術してもあまり変化がない場合は離れた場所には、トリガーポイントがあるかもしれません。
×:トリガーポイント 赤:痛む箇所(関連痛)
リハビリテーションでは、ファシアに対して行う治療手技があります。様々な手技が枝分かれしていて数多くの手技があるのですが、ここでは代表的な治療手技についていくつか紹介したいと思います。
筋膜には血管や神経、リンパ管などを支えるという構造的な作用があります。その筋膜に‘よれ‘が生じることで、それらの組織の働きを低下させてしまう可能性があります。筋膜リリースには、筋膜を伸張するだけでなく、‘よれ‘をほぐして筋膜を正常に機能させる効果があります。
人の身体には、筋力のエネルギーが集中して痛みを生じやすい協調中心という部位があります。協調中心に変性が生じると、関節可動域制限や痛みが起こりやすくなります。問題が生じている協調中心部分に摩擦を生じさせて温度を上げることで、協調中心を正常な状態に戻すことを目的に行われます。
可動域を改善させるために用いる手技で、筋肉を収縮させた後に生じる弛緩を利用して筋肉を伸張させる手技です。主に筋肉の短縮による可動域制限に対して用いられますが、筋膜の緊張を緩和させる作用もあります。
大人になると徐々に体を動かす機会が減ってきます。意識的にストレッチや体操なども行い、しなやかな身体の動きを維持していきましょう。
横山医院 理学療法士 横山 麻希