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食欲のメカニズムの理解と食欲を上手にコントロールする方法

お腹がいっぱいなのに食べてしまう、お腹が空きすぎると一気に食べてしまう、大食いや早食いがやめられないなどといった経験がある方はいらっしゃいますでしょうか。今回は、食欲が抑えられない原因と対処方法について説明していきたいと思います。

 

大食いの女性のイラスト

 

【食欲のメカニズム】

食欲の調節には、脳の視床下部というところが関与しています。脳の視床下部には2つの中枢があり、摂食中枢と満腹中枢に分けられます。空腹感を感じるときは、さまざまな活動により体内のエネルギーが消費されて血糖値が低下し、身体に蓄えていた脂肪を分解してエネルギーを作り出そうとします。この脂肪を分解するときにできるのが遊離脂肪酸というものです。遊離脂肪酸が血液中に増えてくると摂食中枢にこの情報が送られ、空腹感となってエネルギーの補給を要求するのです。

 

一方、満腹感を感じる場合、食事で体内にエネルギーが補給されて血糖値が上昇することでブトウ糖の濃度が上がると、この情報がただちに満腹中枢に伝えられます。その後、満腹中枢から「エネルギー充電完了」という情報が身体にフィードバックされ、満腹感を覚えることになります。

 

【過度な食欲の原因】

①ストレス

異常な食欲を引き起こす原因の一つとしてストレスが挙げられます。ストレスを抱えると身体は危機が起こったと認知し、身体全体で連携して対応しようとします。体内で「抗ストレスホルモン」と言われるコルチゾールが副腎皮質から分泌されます。コルチゾールは血糖値を上昇させ、一時的にストレスへの耐性を高めます。そのため、コルチゾールを出動させるためのエネルギー源として、血糖値を急上昇させるための高カロリーで甘い食べ物を欲しやすくなります。

 

ストレスを感じている女性のイラスト

 

長期にコルチゾールが過剰に分泌されると幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」が減少します。セロトニンは食欲を抑えるように働きますが、その働きが低下してしまうと食欲に歯止めがきかない状態になってしまいます。

 

②睡眠不足

米コロンビア大学が2005年に実施した調査で、興味深い結果があります。32~59歳の男女8000人を対象に調査した結果、平均7~9時間の睡眠時間の人に比べて、4時間以下の睡眠の人の肥満率は73%も高かったのです。米スタンフォード大学が2004年に行った調査では、睡眠時間と食欲は密接な関係であることがわかりました。8時間寝た人に比べて5時間しか寝ていない人は、食欲増進ホルモンである「グレリン」の量が約15%多く、食欲抑制ホルモンである「レプチン」の量が約15%低いという実験結果でした。

 

睡眠不足の人のイラスト

 

これは「睡眠時間が短くなる」=「起きている時間が長くなる」ということになるので、必然的に身体はグレリンを増やしてレプチンを減らすことで食事量を増やし、長く起きている活動時間に対して必要なエネルギーを確保しようとしているのです。そう考えると、夜中のスナック菓子や甘い物、カップラーメンなどが欲しくなるのは理にかなっています。睡眠については当院の過去のブログにありますので、こちらも参考にしてみてください。

 

睡眠と健康|自律神経や体重からみた整形外科疾患との関連性

 

【食欲を上手にコントロールする方法】

①質の良い睡眠をとる

成長ホルモンが出ている睡眠中に、全身の細胞の新陳代謝が最も上昇します。成長ホルモンの分泌がうまくスムーズに行われないと「新陳代謝がうまく行われなくなる」=「基礎代謝量が減る」ので太りやすい体になります。また、成長ホルモンは中性脂肪を分解して、筋肉の修復をしてくれる働きもします。中性脂肪が減って筋肉が太くなれば代謝が上がり、同じことをしても消費カロリーが増えます。成長ホルモンの分泌を促す眠り方としては、次のような方法があります。

 

・成長ホルモンは空腹時に分泌されやすいので、夕食はできれば寝る2~3時間前にとっておく。

・眠り始めの3時間の間に「ノンレム睡眠(脳の活動が低下している状態の深い睡眠)」の中でも、特に深い睡眠が多く出現します。この間に1日に分泌される成長ホルモンの7~8割が出るので、眠り始めてから3時間以内に目を覚ましてしまうような睡眠は質が悪いといえます。つまり、ソファーなどでのうたた寝は避けた方が良いでしょう。

 

②食べ方を工夫する

[食事30分前に水を飲む]

毎食の食事の30分前に約500ミリリットルの水を飲むことにより血液が希釈され、食後血糖の上昇を抑制できる効果があると言われています。ポイントは、水をたくさん飲んでお腹をいっぱいにするのではなく、血糖値の急上昇を抑えるのが目的です。血糖値が急上昇した後に急下降する際、空腹感がより増すことによっての大食いを防止するための方法です。まずは、一日のうちのどれか一食から始めてみても良いかもしれません。

 

[低GI食品を選ぶ]

満腹感を感じにくいことで、つい食べ過ぎてしまう方は、低GI食品を取り入れてみましょう。必ずしも完全に糖質カットしなくても大丈夫です。GI値が低い食品では、糖がゆっくり身体に取り込まれて血糖値の上昇もゆるやかになります。玄米、全粒粉パン、そばなどがおすすめです。

 

[良く噛んで食べる]

人の脳が満腹を感じるには、食事開始から15~20分かかるといわれています。早食いの人は、満腹感じる前にどんどん食物を胃に入れてしまうため、食べ過ぎ&血糖値急上昇からの急降下につながってしまっています。そして、お腹がすぐに減ってしまい次の食事も大食いしてしまうといった負のスパイラルから抜け出せなくなってしまいます。良く噛んで食べることで負のスパイラルを断ち切りましょう。

 

③セロトニンの分泌を促す

[リズム性の運動で増やす]

同じペースでのウォーキングやジョギング、サイクリング、ダンスなどのリズム性の運動にはセロトニンの増加を促す効果があるとされています。一日10~30分程度の軽めの運動をしてみましょう。ただし、長時間の運動はコルチゾールが分泌されてストレス増加につながるので注意が必要です。

 

ウォーキングをしている女性のイラスト

 

[日光を浴びて増やす]

朝に日光を浴びることで目覚めがすっきりし、セロトニンの合成が促進される効果があります。

 

[ガムを噛む]

リズム良くガムを20分ほど噛んでいるだけでもセロトニンが分泌されます。ガムを噛むことによってセロトニンが分泌されることで食欲が抑えられ、ストレスが減るなら一石二鳥ですね。

 

【おわりに】

食欲が止まらない衝動に対してのキーワードは、「良く寝る」「血糖値の急上昇と急下降を抑える」「ストレスを溜めない」の3つです。しかし、いきなり全部をやろうとすると、それがまたストレスにつながり大食いにつながってしてしまうかもしれません。一つずつゆっくり実践して習慣化していきましょう。

 

横山医院 理学療法士  高橋 洋平

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