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夜中に痛みで目が覚めたり、痛みのせいで仕事や家事に集中できず、日常生活に支障をきたすことはありませんか。痛みの治療では、痛みが出てからできるだけ早い段階で適切にコントロールすることが重要です。痛みに対する治療方法には、様々な選択肢がありますが、第一選択となるのが薬物療法、いわゆる「痛み止め」の服用です。しかし、実際には「痛み止めは対処療法のイメージがある」「副作用が怖い」「依存してしまいそうで不安」といった理由で、服用に抵抗を感じているという声を聞くことも少なくありません。一般的に「痛み止め(鎮痛薬)」と呼ばれる薬にも多くの種類があり、医師は痛みの種類や経過期間、副作用のリスクなどを総合的に考慮して処方を行っています。今回は、痛み止めについてお話ししていきます。
痛みは、主に以下の3つに大別されます。
物にぶつけた、火傷をした、捻挫をしたなど、組織の損傷によって生じる痛みです。「ズキズキする」「チクチクする」といった表現が多く、痛みの場所を比較的特定しやすいのが特徴です。この痛みは、体の反応として発生する炎症物質が痛みを感じる神経を刺激し、その情報が脳に伝わることで生じます。薬物療法によりそれらの炎症物質の産生を抑えることで、痛みを軽減する効果があります。
神経そのものが損傷したり、神経が圧迫(狭窄)されたりすることで起こる痛みです。「ビリビリする」「ピリピリする」「しびれる」といった、特徴的な症状を伴うことがあります。神経の末端から脊髄を経由して脳へ痛みが伝わる過程で異常が生じ、痛みの信号が過剰に強く伝達されることが原因です。その為、異常な信号を発している神経の興奮を抑えるような薬物療法が有効とされています。
痛覚変調性疼痛は、2021年に日本痛み関連学会連合によって日本語訳が定義されました。明らかな怪我や病気、神経や脳の損傷がないにもかかわらず、慢性的に痛みを感じてしまう状態を指します。慢性的な刺激や心理的・社会的要因により、痛みを伝える神経が過敏な状態に変化し、その状態が元に戻らなくなっていることが原因と考えられています。心理的要因が深く関わる場合もあるため、身体的治療だけでなく、心理的ケアを含めた総合的なアプローチが必要となります。
今回は、①侵害受容性疼痛と②神経障害性疼痛に対する薬物療法について解説します。
・ 非ステロイド性消炎鎮痛薬:ロキソニン、セレコックス、ボルタレンなど
主な特徴
炎症によって産生されるプロスタグランジンという物質を抑えることで、炎症と痛みを鎮めます。炎症が原因でない痛みに対しては、効果が弱い場合があります。
主な副作用
胃潰瘍や胃腸障害が比較的おこりやすい為、胃薬を併用することがあります。頻度は低いものの、喘息発作や腎機能障害を引き起こすことがある為、持病がある方は主治医と相談しながら使用することが大切です。
・アセトアミノフェン:カロナールなど
主な特徴
作用機序は完全に解明されていませんが、炎症物質を抑えたり、脳で痛みの信号を和らげたりする作用があります。侵害受容性疼痛の第一選択薬として使用されることが多く、他の鎮痛薬と併用される場合もあります。副作用が比較的少なく、安全性の高い薬とされています。神経障害性疼痛に対する効果は期待できません。
・ 弱オピオイド:トラマドールなど
主な特徴
脳神経系に存在するオピオイド受容体に作用し、痛みを伝える神経の興奮を抑えます。
主な副作用
便秘、吐き気・嘔吐、眠気などが比較的多くみられます。必要に応じて、吐き気止めや便秘薬を併用することがあります。
・ ミロガバリンベシル酸塩:タリージェ
主な特徴
異常に興奮している神経を抑制することで、痛みを和らげます。末梢性神経障害性疼痛に対する第一選択薬として位置づけられています。中枢性神経障害性疼痛や線維筋痛症には適応がありません。
主な副作用
眠気やめまいが主な副作用の為、転倒リスクがある方は特に注意が必要です。体重増加や浮腫がみられることもあります。
・プレガバリン:リリカ
主な特徴
神経の過剰な興奮を抑えることで鎮痛効果を発揮します。神経障害性疼痛の第一選択薬の一つで、投与開始から約1週間程度で効果を実感しやすいとされています。
主な副作用
めまい、眠気、むくみなどが多く報告されています。服用中は、自動車の運転や危険を伴う機器の操作は避けてください。
・ デュロキセチン:サインバルタ
主な特徴
脳内で痛みを伝える信号を調整し、徐々に痛みを和らげます。即効性はなく、徐々に効果が現れる薬です。
主な副作用
服用初期に、吐き気、口の渇き、眠気などが出ることがあります。めまいやふらつきが起こる可能性がある為、運転や危険作業は控える必要があります。
痛み止めの服用とリハビリを併用することで、より強い痛みの改善効果が期待できます。明らかな怪我の後に痛みやしびれが出た場合は、服薬だけで改善することもあります。しかし、特に思い当たる原因がないまま痛みやしびれが出現した場合、症状の原因そのものを改善しなければ、服薬を中止した際に症状が再発する可能性があります。
痛みの治療では、初期段階での適切な服薬と、痛みやしびれを引き起こす原因を改善することが重要です。一時的な痛みやしびれであれば問題ない場合もありますが、1週間以上続く症状を放置しないことが大切です。慢性化する前に、早めに医療機関を受診することをおすすめします。
横山医院 理学療法士 高橋洋平