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膝関節の軟骨がすり減ってしまい、関節を覆っている滑膜の炎症や骨棘の形成などを引き起こす疾患を変形性膝関節症といいます。発症者は女性で多く、45歳以降で徐々に発症者数が増加して、60歳以降になると患者数は急増します。
日本ではO脚による膝関節内側の変形が多くみられ、発症の要因としては遺伝的要素や生活習慣、肥満などが考えられています。
症状としては、膝関節の痛みや関節可動域制限、筋力低下や歩行時の動揺などがみられます。関節可動域制限や筋力低下は不良姿勢の原因にもなり、変形性膝関節症を進行させる要因にもなってしまいます。また、痛みが強くなってくると外に出る機会が減るなど活動性の低下にもつながります。その結果、さらに筋力低下や骨密度の低下などを引き起こし、虚弱状態や要介護状態への移行を促進させる不安要素となってしまいます。
治療には保存療法と観血的治療とがあります。保存療法では薬物療法による痛みの軽減や、ヒアルロン酸の関節内注射、温熱などの物理療法や理学療法士による運動療法などが行われます。膝関節は足関節や股関節、あるいいは骨盤や腰からも影響を受けるので、身体全体から膝関節にかかる負担を考えなければなりません。そのため、リハビリテーションによる姿勢の改善や筋力低下などに対する機能回復訓練は非常に重要になってきます。
観血的治療としては、骨切り術や人工膝関節置換術といった治療が行われます。骨切り術は比較的若く活動性の高い例で適応があり、人工膝関節は変形性膝関節が高度に進行して、強い痛みも伴い著しく歩行が困難になった症例に対して行います。人工膝関節置換術には対応年数があり、一般的には約20年と言われています。若いうちに人工膝関節置換術を行ってしまうと再手術が必要になるケースがでてくるため、基本的には60歳以上で適応となります。
保存療法と観血的治療どちらを選択するにしても、生活習慣の改善は重要な要素になってきます。保存療法で経過観察する場合においても、薬物療法やヒアルロン注射を行うだけでは膝関節にかかる物理的な負担を減らすことはできません。食生活の改善による体重管理、運動習慣の獲得による関節液の循環改善、筋力や可動域の維持が変形性膝関節症の予防や改善につながってきます。
また、人工膝関節を選択する場合においても、体重管理や運動を疎かにしてしまうと人工膝関節にも負担がかかり、通常の対応年数である20年を待たずに再手術となってしまうことも考えられます。膝に強い痛みや継続する痛みを感じた場合は一人で無理をせず、専門家の指導を受けて適切な治療や生活習慣の改善のための指導を受けるようにしましょう。