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野球肘検診は、1980年代に徳島大学病院が野球少年の障害の実態調査のために少年野球組織と協力して大規模な検診を行ったのが始まりと言われています。現在では、全国的に医師や理学療法士、柔道整復師等が積極的に行うようになってきました。しかし、それでも全員が検診を受けているわけではなく、残念ながら肘を痛めて来院する小中生は当院にもたくさんいらっしゃいます。
野球肘検診は、中学生以下の野球選手を対象に行われる肘の検査です。主に以下の目的で実施されます。
野球肘の初期症状を発見して深刻化を防ぐ。
検診で得られた情報をもとに、選手や指導者にアドバイスを行い野球肘の予防策を講じる。
定期的な検診により野球肘の進行状況を把握し、必要に応じて治療方針を調整する。
検診では、以下のような項目が行われます。
痛みの部位や程度、野球歴などについて質問します。
肘の腫れや変形、圧痛の有無などを確認します。
肘の曲げ伸ばしや回旋の動きを評価します。
エコー(超音波)により、肘の骨や靭帯の状態を調べます。
これらの検査結果をもとに医師が総合的に判断し、野球肘の重症度や治療方針を決定します。野球肘検診は、若年期の野球選手の健康を守り、長くスポーツを続けるために重要な役割を果たしています。
野球肘は、障害部位により大きく3つのタイプに分類されます。今回は詳細を割愛しますが、3つのタイプを紹介します。
肘関節の内側にある内側側副靭帯と、その付着部の骨に問題が生じる障害です。肘の内側の問題というと、大谷翔平選手のように靭帯損傷が思い浮かぶかもしれません。成長期までは骨の強度が低いため、靭帯付着部の軟骨の損傷が主となります。骨の成長が完了する高校生以後では、靭帯の問題が生じるようになってきます
肘の後ろが痛む後方型は、さらに衝突型と牽引型に分かれます。衝突型は、肘の内側で上腕骨と尺骨がぶつかってしまうことで痛みが出ます。牽引型は、腕の後面にある上腕三頭筋という肘を伸ばす筋肉が硬くなることで付着部の骨が引っ張られて痛みが出てしまいます。
肘の外側に痛みが出る外側型は、上腕骨の小頭という部分と橈骨の橈骨頭が繰り返し衝突することで上腕骨小頭の軟骨や骨部分が損傷してしまいます。発症初期は痛みが出にくいという特徴があります。
いずれのタイプも初期には安静で症状は改善できるのですが、外側型は進行するまで痛みが出ないこともあり自分で気が付かないので、初期の安静が取りにくいという問題があります。痛みが出た時には、重症化して長期間の投球禁止や最悪の場合、手術に至ってしまう可能性があります。
そのため、野球肘検診では無症状の外側型野球肘の所見をいかに見つけるかが最大のポイントとなってきます。
現在、野球肘検診は全国的に拡がってきており、一般的なものになってきました。今回は一例として、当院がある横浜市の例をご紹介したいと思います。
横浜市野球肘検診推進協議会が中心となり、例年横浜市18区を5ブロックに分割し、12月から1月の休日に実施しています。ブロックごとに医師、理学療法士等が協力して検診にあたっています。小学5-6年生の希望者を対象に超音波によるチェックを行い、初期の離断性骨軟骨炎を見つけることを主目的としています。費用は1人500円で受けることができ、「ワンコイン検診」と言われています。また独自に病院や接骨院単位で、様々な形で行っているところも増えているようです。
今回は野球肘検診を紹介しました。野球肘は悪化すると回復まで長期間を要することが多いので、予防することが一番の対策です。そのため、日頃から身体の柔軟性等のコンディションを整えること、そして定期的に検診を受けることが有効だと考えられます。
横山医院 理学療法士 明楽 豪