医院ブログ
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尿漏れとは、排尿しようと思っていないのにトイレ以外の場所で尿が出てしまい、生活上困ったり衛生的に問題が生じたりします。これには、骨盤底筋という筋肉が大きく関わっています。原因は、妊娠や出産、肥満、更年期に起こるエストロゲンの減少、加齢による筋肉の脆弱化などが挙げられます。また、排便時の過剰な努責、喘息や花粉症などによる持続的な咳やくしゃみ、コルセットの着用なども骨盤底筋に負荷がかかり、尿漏れの原因となります。
お腹に力が入った時に尿が漏れるタイプです。女性の尿漏れの半数以上を占め、咳やくしゃみをした時や重い物を持ちあげようとした時、急に小走りした時や坂を下る時などに漏れる傾向があります。44%の女性に切迫性尿失禁が合併し、骨盤底筋の弱化により尿道を支えられなくなることが原因で起こります。
トイレに行きたいと思ったら我慢が出来ずに尿が漏れるタイプで、過活動性膀胱の中で尿漏れのあるものを指します。膀胱が勝手に収縮する運動性のタイプと、膀胱の知覚が過敏になる感覚性のタイプ(膀胱炎など)に分けられます。原因が多岐にわたり、特定が困難となっています。
トイレに行きたいと思わないのに漏れているタイプ。脊髄損傷など、神経伝達回路に高度の障害があると考えられます。
残尿が常にあり、ちょろちょろと絶えず漏れるタイプで、尿の出方に勢いがないのが特徴です。子宮や直腸がんの術後、糖尿病などが原因となることが多いです。原因疾患の治療や投薬などが必要となります。
認知症や傷病などにより体の動きが悪く、トイレに間に合わない状態です。1日の排尿パターン(トイレに行く時間、排尿量、いつ漏れやすいのか)を把握し、漏れやすい時間より早めに排尿するようにしてみましょう。
尿漏れを招く生活習慣を見直しましょう。
・重い荷物を持たないように、ショッピングカートなどを利用しましょう。
・飛び跳ねたりするスポーツは控えましょう。
・肥満や便秘にならないように気を付けましょう(骨盤底筋に負担がかかります)。
・タイトな服やきついガードルなど、おなかを締め付けるものは避けましょう。
・カフェインや炭酸飲料、アルコールは控え、すっぱいものや辛いものも避けましょう。
・骨盤の前後傾や体のねじれなどがあると骨盤底筋が働きにくくなります。自身の姿勢(左右の肩の高さや腰の高さ、捻じれなど)を鏡で確認しましょう。
尿漏れには薬物療法や手術療法も適応となることがありますが、症状が軽い場合は以下のトレーニングが有効ですので行ってみてください。
膀胱訓練とは、尿意があっても可能な範囲で排尿を我慢して、膀胱に尿をためる力を保つ練習です。我慢した後に膀胱が刺激されて症状が悪化したように感じられても、それは膀胱が広げられたことによる一時的な症状であるため心配はいりません。尿意を感じた時は、他のことを考えて気持ちをそらすことで尿意を遠のかせ、トイレへ行く間隔を伸ばしていきましょう。
※ 「排尿を我慢したから膀胱炎になる」などといったことはなく、日常生活では早めに排尿する習慣があると排尿リズムが崩れてしまいます。膀胱炎患者には、少ししか尿がたまっていない状態で早めにトイレに行く習慣のある人が多く、膀胱萎縮傾向が強まることもあります。
1.仰向けになり両膝を立て、リラックスしてゆっくり腹式呼吸をします。
2.息を吐きながら、水を吸い上げるようなイメージで、膣をしめる練習をします(男性の場合は睾丸を引き上げるようなイメージ)。
片手をおなかの上に置き、腹筋に力が入らないようにしましょう。もう片方の手を会陰部に当て、そこの筋肉が収縮するのを確認しながら行います。
「締めて・緩めて」を10回繰り返します。
3.次に持続力を鍛えます。膣を絞めた状態で2~3秒キープし、その後リラックスします。これを4~5回繰り返し、1日数セット行いましょう。慣れてきたらキープする時間を伸ばしていきます。
膣を絞める感覚がどうしてもつかめない場合は、肛門を絞めるように力を入れてみましょう。
※注意点
・骨盤底筋は呼気の際に収縮します。力を入れるときは息を止めずに吐きながら行いましょう。呼吸がうまく合わない場合は「うー」など声を出しながら行いましょう。
・骨盤底筋だけを収縮させるようにして、腹筋やお尻、腿などに力が入らないようにしましょう。
・座位や立位で行う場合は、背中を伸ばしてまっすぐ前を向いた姿勢で行いましょう。立位の場合はテーブルなどに手を付いて行います。
骨盤底筋体操はすぐに効果が出るものではないので、毎日欠かさず継続して行いましょう。目で確認できない箇所のトレーニングのため、感覚をつかむのが難しいことが多く、正しく獲得するためには医療従事者の個別介入が望まれます。お悩みの方は、一度カルチャーセンターや医療施設等で行われる骨盤底筋体操教室に参加されてみてはいかがでしょうか。
横山医院 理学療法士 横山 麻希