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皆様は睡眠負債という言葉を聞いたことがあるでしょうか。睡眠負債とは、本来必要な睡眠時間を確保できず、なおかつそのような状態が数日から数週間続いて慢性的に睡眠が不足した状態のことをいいます。徹夜や一晩だけの寝不足では、睡眠負債とは言いません。
なお、日本は先進国の中で睡眠時間が圧倒的に短く、しかも年々短くなってきています。つまり、日本国民の多くが睡眠負債を抱えている可能性があるということです。2018年のデータでは、日本人の平均睡眠時間は7時間22分で、先進国で26か国の平均は8時間25分であるのに対して大幅に短くなっています。
日本で1988~1999年に行われた調査では、平日夜の睡眠時間が7時間ほどの人で死亡率が最も低く、それよりも睡眠時間が短すぎても長すぎても死亡率は高くなるという結果がでています。このような調査は世界各国で行われていて、いずれも似たような調査結果が出ています。
日本では睡眠時間が短い方のほうが圧倒的に多く、その中でも睡眠負債がたまっている人のことを医学用語では「行動誘発性睡眠不足症候群」といい、睡眠障害の一種とされています。なお、稀に1日に5時間以下の睡眠時間でも問題のない「ショートスリーパー」と呼ばれる人もいますが、その割合は数百人に1人程度のため、自分は睡眠時間が少なくても大丈夫などと過信しない方が良いかもしれません。
睡眠のリズムは個人によって異なり、人それぞれに合った睡眠時間や入眠時間があります。人の身体には体内時計がそなわっていて、その体内時計の周期によって睡眠のタイプは変わってきます。そのため、早寝早起きの朝方が合っている人もいれば、遅寝遅起きの夜型が合っている人もいるということになります。
これらの朝方か夜型かという睡眠のタイプは、実は遺伝的な要素が大きく関わっているということがわかっています。また、年齢によっても傾向が変わり、小さい頃に比べて10代以降では夜型になりやすく、40~50代になると朝方になり、加齢によってさらに朝型傾向が強くなってきます。
ただ、遺伝的な要素が大きいといってもそう簡単に遺伝子の検査をできるわけではありません。もしもご自分の睡眠のタイプが知りたいという方は、以下の「朝方夜型質問紙」というサイトのテストを受けていただくと、ご自分がどの睡眠のタイプかわかります。
睡眠負債をためないためには、まず自分が十分な睡眠をとれているかを知る必要があります。ただ、十分な睡眠時間といっても自分に必要な睡眠がどれくらいかなど、なかなか簡単にわかるものではないかと思います。そこで、自分の睡眠習慣を記録しておいて、その記録から自分に適した睡眠時間を割り出すという方法があります。
まず、平日の入眠から覚醒するまでの睡眠時間がどれくらいだったかを記録します。できれば入眠時間や覚醒時間も把握できるようにしておいた方が良いでしょう。そして、休日も同様に記録するのですが、平日に比べて休日の睡眠時間が2時間長いようであれば、睡眠負債が溜まっている可能性が高いということになります。
もしもそのような状態になっているようであれば、平日の睡眠時間が不足しているということになるので徐々に平日の睡眠時間を増やし、休日に長く寝てしまうようなことがなくなってくれば、それがその人に合った必要な睡眠時間だということです。
仕事の日は忙しくてあまり寝られず、その代わりに休みの日に沢山寝て帳尻を合わせている方もいらっしゃるかと思いますが、実は睡眠負債がたまっていると2~3日ぐっすり寝た程度では十分に解消できないということがわかっています。ただ、休みの日も早く起きてしまうよりは、寝だめをした方が死亡率が多少低くなるようです。しかし、休みの日で一気に寝だめをしてしまうと生活リズムが崩れてしまったり、糖尿病のリスクがあがったりというマイナス面も指摘されています。
睡眠負債をしっかりと返そうとすると、3週間程度はしっかりと睡眠をとる必要があります。つまり、日々の睡眠を見直すことが睡眠負債を減らすためには極めて重要だということです。
多忙でストレスの多い現代社会では、睡眠で脳をしっかりと休めるということは非常に大切なことです。皆様もご自分の睡眠について再確認していただき、ご自分に合った睡眠のとりかたを実践してみてはいかがでしょうか。
横山医院 理学療法士 藤平 真二