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高齢者の転倒を予防するために必要な自宅の環境の見直しとは

安心できる場所である住み慣れた我が家には、大きな怪我につながる危険が潜んでいることをご存じでしょうか。今回は、安心できるはずの「住み慣れた我が家」に潜む転倒の危険とその対策について紹介させていただこうと思います。

 

高齢者が転倒しているイラスト

 

【家の中に潜む転倒リスク】

東京消防庁によると転倒で救急搬送された方のうち、56%は自宅住居内または敷地内で発生し、そのうち9割以上が「自宅内」での転倒事故となっているようです。自宅内の事故の発生場所としては、第一位 居室・寝室、第二位 玄関・勝手口、第三位 廊下・縁側・通路、第4位 トイレ・洗面所、第5位 台所・調理場・ダイニング・食堂となっています(東京消防庁:平成27年~令和元年までの調査)。このように、家の中にも屋外と同じように危険が潜んでいることがわかります。普段くつろいでいる居室や寝室に、そんな危険が潜んでいるなんて意外ですね。

 

【高齢者の転倒の原因】

東京消防庁によると、65歳以上の救急搬送のうち実に8割以上が「ころぶ」が原因で、そのうち約4割弱の方が入院を必要とする中等症以上の怪我を負われているようです(図1-1,1-2)。介護を受けることになった原因別にみると「転倒・骨折」は全体の12.5%にあたり4番目に多い原因となっています(厚生労働省;2019;国民生活調査)。

 

図1-1:事故種別ごとの高齢者の救急搬送人員

転倒の原因を示した図

 

図1-2:事故種別ごとの救急搬送人員と中等症以上の割合

転倒による中等症以上の割合を示した図

 

なぜ加齢によって転倒が増えるのかその原因を考えていきましょう。

転倒の原因は以下の通り内的要因(身体の原因)と外的要因(環境の要因)に分けられます。

 

内的要因:運動要因(筋力、持久力、骨関節機能、姿勢変化、心肺機能、協調性など)

     高次脳要因(注意、意識、記憶、学習、認知機能など)

     感覚要因(視覚、聴覚、深部感覚、前庭覚など)

疾患(パーキンソン病、脳血管疾患、脊髄疾患、末梢神経障害、筋原性疾患など)

薬物の服用(鎮静剤、睡眠剤、向精神薬、降圧剤、血糖降下剤など)

外的要因:つまずきやすい環境(段差、敷居、階段、散らかった部屋、配線コード、敷物など)

滑りやすい環境(滑りやすい履物、すべりやすい床、敷物など)

不適切な支持物(杖が合っていない、不安定なものを支持するなど)

 

上記のうちの赤字となっているものは加齢により影響を受けやすい因子といえます。多くの場合、これら内的要因が複数に関わり、またそれぞれが加齢や病気等により悪化・進行していくことで転倒しやすい身体機能へと変化し、さらにはこれに環境的要因が関ることで転倒が発生します。

 

【転倒しやすい方の特徴】

それはずばり「転倒歴」です。今までどれくらいの回数・頻度で転んでいるかということです。頻回に転倒を繰り返している方ほど転倒するリスクが高いといえます。他には「歩き方」にも注意が必要で、歩幅が狭い、すり足、小刻み歩行、歩行速度が遅い、まっすぐ歩けていない(左右にふらつきがある)などがみられる場合は転倒のリスクが高い状態と考えられます。ただし、最近になって転倒が急激に増加した場合や歩行状態が急激に変化した場合などは病気や薬などの影響も考えられますので、まずは医療機関を受診しましょう。

 

【環境設定による転倒予防対策】

加齢とともに内的要因が増加することで転倒リスクが増大していくことがお分かりいただけたと思います。ここからは、皆様のご自宅内の環境、つまり外的要因を改善することで転倒リスクを下げる方法をいくつか紹介させていただきたいと思います。

 

室内の環境設定のイラスト

 

照明:夜間のお手洗いの際に足元を明るく保つようにしましょう。動線の電球を自動で点灯するタイプに変更したり、コンセントにつなぐタイプの常夜灯を設置したりするのも良いかもしれません。

階段:手すりが無い場合は、手すりを設置しましょう。

床:絨毯やマットの端が浮いていないか確認してください。浮いている場合は、浮かないように固定するか敷物を撤去しましょう。敷物が床と滑っていないか注意してください。滑っている場合は滑らないように固定するか滑り止めマットを挟みましょう。濡れている床は大変危険です。濡れていたらすぐに拭きましょう。特に浴室は注意が必要です。

障害物:歩く動線に物が散乱していないよう整理しましょう。出来るだけ配線コードなどが動線を横切らないように設置しましょう。1cm弱の高さでも歩き方によっては転倒リスクになります。

支持物:普段支えているものが安定しているか確認しましょう。キャスター付きの家具等は危険です。支持物を安定する家具等に変えると良いでしょう。必要な場所には手すりを設置しましょう。特に壁紙に手垢が付いているところは手すりを付けるポイントです。

 

【介護保険を活用した環境設定】

要介護認定を受けている場合は介護保険サービスを利用して環境を調整することが出来ます。

〇住宅改修費

要介護や要支援の認定を受けた場合は手すり設置や段差解消のための工事等が助成の対象となります。工事費の内、20万円までは負担割合に応じた自己負担のみで工事をすることが出来ます。

例:1割負担の方が20万円の工事をした場合、自己負担は2万円

〇福祉用具レンタル

様々な福祉用具レンタルが負担割合に応じた金額で借りることが出来ます。

設置工事を一切必要としない置き型の手すりや天井と床で突っ張るタイプの手すりなどを負担割合に応じて月額数百円からレンタルすることが出来ます。

図2 玄関の昇降に使う置き型のレンタル手すり

片側手すりのものや段差付きのものがある

玄関で使う置き型手すり

図3 レンタルできる手すり

釘を一切打たないため位置の変更や元の状態に戻しやすい

 

 

図4 レンタルできるトイレ用手すり

トイレで使用するレンタル手すり

 

図5 置き型手すり

置くだけで設置 位置の変更や撤去が円滑に行える様々な形状、大きさがある

 

置き型手すり

 

【まとめ】

今回は、自宅内のおける転倒の危険性、加齢と転倒の関係、環境面(外的要因)における転倒予防対策についてお話させていただきました。住み慣れた我が家でいつまでも安心して暮らせるように、今一度ご自宅の環境を見直していただければと思います。また、今回紹介させていただいた内容以外にも転倒を減らすためには身体面である内的要因の改善も重要であり、運動や栄養、疾患の治療や服薬管理等へのアプローチが必要です。しかし、これら全てをご本人様やご家族様が判断しご対応いただくことは非常に困難です。転倒が増えてきた際は、是非ケアマネージャーさんなどの支援者や医療機関にご相談いただくことをお勧めいたします。

 

【当院の取り組み】

当院では住み慣れた地域やご自宅で安心・安楽に過ごしていただく支援をさせていただくことも地域の医療機関の役割であると認識し、通院が出来ない状態の患者様に対しては、当院の医師・看護師・理学療法士をご自宅まで派遣させていただき支援をさせていただく在宅医療に力を入れております。特に、理学療法士が実施する訪問リハビリでは、実際に皆様のご自宅を訪問してお身体のご状態や自宅内の環境を確認させていただいたうえで、問題解決を支援することに取り組んでおります。是非ご担当のケアマネージャー様や当院医師へご相談ください。

 

横山医院 理学療法士  横山 武生

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