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スキャモンの発育曲線から考える小中学生のトレーニング方法

【はじめに】

お子様が小中学生で何らかのスポーツをしており、パフォーマンス向上や怪我予防のためにトレーニングをしたいものの「なにをしたらよいかわからない」「小中学生で筋トレしていいの?」「筋トレすると背が伸びなくなると聞いた」など様々な心配をしていらっしゃる保護者の方も多いのではないでしょうか。今回は、主に小中学生のトレーニングの考え方について解説していきます。

 

【スキャモンの発育曲線に合わせたトレーニング】

人間の成長過程では、様々な要素によって発達速度が異なります。よく用いられる図として「スキャモンの発育曲線」があります。スキャモンの発育曲線とは、リンパ型、神経型、一般型、生殖型に分類し、20歳を100とした時の「量」的な成長を示したものです。小中学生の運動に関しては、現在どの成長段階にあるのかを意識して行うことが大切とされています。

 

スキャモンの発育曲線の図

スキャモンの発育曲線の図

『各タイプの概要』

①リンパ型

免疫をつかさどるリンパ組織の発達を表します。最も特徴的なのは、6歳前後で100%を超えて10~12歳で180%まで発育し、その後低下していくといった他にはない曲線パターンとなっています。

 

②神経型

脳、脊髄、感覚器の成長を表します。器用さ、リズム感等に影響します。図の曲線の通り、6歳頃にはほぼ100%に到達します。

 

③一般型

身長、体重、臓器の成長を表しています。14歳頃から急激に上昇し、18歳頃にほぼ100%に到達します。これは、他の型と比べて一般的に皆さんもイメージしやすい、いわゆる成長期の曲線ですね。

 

④生殖型

生殖器の発達を表しており、性ホルモンの分泌に影響しています。思春期にあたる14歳頃からの発育が顕著です。

 

『スキャモンの発育曲線から考える年代別運動』

スキャモンの発育曲線から、各世代で特に発育が目立つタイプが異なることがわかりました。これらの時期はそれぞれ「プレ・ゴールデンエイジ」「ゴールデンエイジ」「ポスト・ゴールデンエイジ」と言われています。

 

①プレ・ゴールデンエイジ(3~8歳)

運動能力の基礎ができる時期。神経系が発達する時期で巧緻性(器用さ)、リズム感、バランス感覚等、身体をうまく動かす上での基本的な要素が成長します。そのため、この時期は技術を身に着けるというよりも様々な課題を行うことが推奨されます。単純に言えば、走って、跳んで、投げて、蹴るなどの基本的な動きを身に着けることが大切です。特別なことではなく、遊びの中で様々な動きを体験することでもよいです。

 

ダンスをしている子供のイラスト

 

②ゴールデンエイジ(9~12歳)

神経型の発達が終わってから間が空いておらず、身体的にも成長してくる絶妙なバランスの期間は、人間の発達段階でこの時期のみと言われていて、それゆえの「ゴールデン」なのです。この時期には新しく動作や技術を習得するのに最適な期間です。習得した技術は基本的に大人になっても残りやすいといわれおり、各競技の基本動作を身につけるのに最も適した時期と言えます。

 

サッカーをしている男の子のイラスト

 

③ポスト・ゴールデンエイジ(13~16歳)

一般型の発育が盛んで、全身的な体力を鍛えるのに適した時期といえます。様々なトレーニングを行うことで、全般的なフィジカル能力向上を感じやすいものと思います。その中でも、呼吸、循環器系の能力が向上する時期なので、長距離やインターバルトレーニングなど持久力向上を目的としたトレーニングがおすすめです。

 

ランニングをしている男の子のイラスト

 

④ポスト・ゴールデンエイジ後

生殖型の発育が盛んで、ホルモン分泌量が増大するため骨や筋肉の発達が進む時期です。一般的には筋力強化を目的としたトレーニングを始めるのに適しているとされています。骨の強度も上がってくるので強度の高いトレーニングにも耐えられるようになってきます。

 

筋トレをしている男性のイラスト

 

上記の各時期は一般的な例であり、個人により成長速度は当然異なってきます。絶対的なものではありませんが、おおよそ現在どの時期にいるのかを把握したうえで、どこに重点を置いて行うべきか参考になるものと思います。特に意識したいのは、各時期がピラミッド構造となっている点です。下の世代で身に着けるべきことを身に着けたほうがスムーズにパフォーマンス向上に結び付くものと思われます。

 

『年代別重要ポイントのまとめ』

~12歳  神経系トレーニングを中心に。様々な動作挑戦し吸収していく時期。

 

13~16歳  呼吸、循環系トレーニングを中心に。持久力向上が図れる時期。

 

17歳~  筋力、筋肉量向上等フィジカルトレーニングを中心に。

 

【スキャモンの発育曲線を用いる上での注意点】

ここまで成長曲線に基づいたトレーニングの紹介をしてきましたが、それが全てではないことに注意が必要です。成長速度が個人により異なるのはもちろんですが、もともとスキャモンの成長曲線は各要素の「量」的な変化のグラフであり、必ずしも「質」の変化と一致するものではないからです。したがって、ゴールデンエイジを過ぎたからといって運動学習が進まないかといえば、必ずしもそうではないのです。

 

成長曲線を意識したトレーニングは一つの目安として活用し、小中学生のうちは様々なことを経験することが一番大切なこと言えます。その中から、その子に適した内容に重点を置くことが大切だと思います。

 

【子供の筋力トレーニングについて】

ここまで話してきたとおり、筋力を向上させるのに最適なタイミングはポスト・ゴールデンエイジ後です。また、一般的に「子供に筋力トレーニングはよくない」「背が伸びなくなる」などネガティブな話を耳にすることもあります。それでは、成長期までの筋力トレーニングは行わない方が良いのかというと、答えはNOです。筋力トレーニングが子供や成長期の男女の発育を遅らせるという科学的根拠は現在認められていません。むしろ、適度な負荷は成長ホルモン分泌の促進、骨の成長促進、心肺機能強化等ポジティブな効果が報告されています。

 

ただし、ポスト・ゴールデンエイジまでの世代はまだ骨や腱の強度が弱く、高強度の負荷に耐えることができません。そのため、ウェイトを負荷しての高強度トレーニングは推奨されていません。自重で行うもので十分です。リハビリでも指導することが多いのですが、スクワット、ランジ、プランク等の種目はおすすめです。もちろん筋力強化種目ですが、姿勢のコントロール、バランス、筋肉を使っている意識等神経系に対するトレーニングにもなっており合理的な種目と言えます。

 

注意点としては、自重だから負荷が軽いというわけではないことです。例えば腕立て伏せでは、胸や腕には自重の60~70%の負荷がかかると言われています。体重50kgの場合、30~35kg程度の負荷がかかっていることになるので、20kgのバーベルを扱っているよりも負荷はかかっていることになります。自重だからウェイトトレーニングよりも安全、負荷が軽いと一概には言えないのです。

 

腕立て伏せをしている男性のイラスト

 

【おわりに】

それでも筋力トレーニングは種目選び、やり方を間違えなければ禁止ということはありません。その方にとって、適切な運動内容、方法を助言するのはトレーナーの役割なので、興味がある方は一度相談されることをおすすめします。今回は、主に小中学生を対象としたトレーニングについて解説しました。お子様達の成長のお役に立てたら幸いです。

 

参考文献:NSCA決定版 ストレングストレーニング&コンディショニング 第4版

 

横山医院 理学療法士  明楽 豪

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