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大腿骨頚部骨折は高齢者に多い骨折で、主に転倒により骨折してしまうケースが多くみられます。特に骨粗しょう症を併発している方で骨折の危険性が高まり、骨の癒合も生じにくい部位であるため寝たきりの原因になってしまうこともあります。大腿骨頸部骨折には「内側骨折」と「外側骨折」とがあり、特に内側の方では大腿骨頭への血流が遮断されてしまうことにより「大腿骨頭壊死」といった状態になってしまう危険性があります。
大腿骨頚部骨折の原因となる転倒には、関節可動域や筋力の低下、バランス機能の低下などのいわゆる「ロコモティブシンドローム」といった状態になると転倒の危険性が高くなってしまうため、普段の食事や運動などの生活習慣を見直していくことが転倒の予防のためには大切になってきます。
大腿骨頚部骨折ではレントゲンにより骨折の有無を判断します。骨性あるいは軟部組織の連続性や骨折の転位の有無によって骨折の程度が分類され、一般的に「Garden分類」といったものが用いられています。
Garden分類
stage Ⅰ:不完全骨折(内側骨折で骨の連続性が保たれているもの)
stage Ⅱ:完全骨折で最小限の転位のもの(軟部組織の連続性は保たれている)
stage Ⅲ:完全骨折で転位あり(大腿骨頭への血行はある程度保たれている)
stage Ⅳ:完全骨折で転位あり(大腿骨頭への血行が失われている)
大腿骨頭への血流がどの程度保たれているかで大腿骨頭壊死の危険性が予測され、治療法としては「骨接合術」か「人工股関節置換術」が選択されます。stage Ⅰ・Ⅱでは骨接合術が、stage Ⅲ・Ⅳでは人工関節置換術が行われることが多くなります。大腿骨頚部骨折の症状としては、強い疼痛や歩行障害が主となります。そのため、寝たきりになってしまう危険性も高くなり、それに引き続いて生じる関節可動域や筋力の低下、あるいは認知機能の低下や循環器機能の低下なども引き起こされる可能性が高くなります。こういった状態を回避するためにも、手術療法を行うことで早い時期から荷重訓練や歩行練習を行うことが大切になってきます。
大腿骨頚部骨折後の歩行能力は、手術前の歩行能力が高いほど低下しにくいといった傾向にあります。ただ、高齢者の場合はもともと股関節の変形や拘縮などにより脚長差があることもあり、人工股関節置換術により脚の長さが延長されると「大腿神経」「閉鎖神経」「坐骨神経」といった神経が緊張してしまい、神経症状が起こる場合もあります。そのため、術前の状態をしっかりと把握した上で、手術後のリハビリテーションを行っていく必要があります。