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糖尿病の治療では、食事療法や薬物療法と並んで運動療法が重要です。特に2型糖尿病では、運動によって筋肉が血液中のブドウ糖をエネルギーとして利用するため、血糖値を下げる効果が期待できます。継続的に体を動かすと、インスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」の改善にもつながります。その結果、少ないインスリンでも筋肉が糖を取り込みやすくなり、血糖コントロールの改善が期待できます。さらに、糖尿病の運動療法には体脂肪の減少、脂質代謝の改善、血圧の安定、心肺機能や筋力の向上など、血糖値以外にもさまざまな効果があります。
糖尿病の運動療法では、ウォーキングや自転車運動などの有酸素運動が基本です。有酸素運動によって筋肉への血流が増えると、ブドウ糖が筋肉に取り込まれ、血糖値が下がりやすくなります。一方、スクワットやかかと上げなどの筋力トレーニングも有効です。筋肉量が増えると、糖を消費できる場所が増え、長期的な血糖コントロールにつながります。有酸素運動と筋トレは、どちらか一方だけを行うのではなく、体力や関節の状態に合わせて組み合わせることが勧められています。
厚生労働省の健康情報では、中等度の有酸素運動を週150分以上、週3回以上行い、筋力トレーニングを週2~3回取り入れることが一般的な目安として紹介されています。中等度とは、少し息が弾むものの、会話は続けられる程度の強度です。ただし、運動習慣がない人が最初から週150分を目指す必要はありません。まずは1回10分程度のウォーキングや、食後に家の周囲を歩くことから始めましょう。短い運動でも、回数を増やすことで身体活動量を確保できます。「毎日30分できなかったから意味がない」と考えるより、短い時間でも継続することが大切です。
食後は、食事から吸収された糖によって血糖値が上昇し、一定の時間が経過すると元の血糖値に戻ります。また、下の図のように、食後急激に血糖値が上昇してしまうことを「グルコーススパイク」といい、急激な血糖値の上昇には注意する必要があります。血糖値が上昇する時間帯にウォーキングなどを行うと、筋肉が糖を利用するため、食後の血糖値上昇を抑える効果が期待できます。「食後のウォーキングは何分必要か」という疑問を持つ人も多いですが、まずは無理なく続けられる時間から始めることが重要です。食後に10~15分歩く、エレベーターではなく階段を使う、座り続ける時間を減らすといった方法も、運動療法の一部になります。運動の効果は永久に続くわけではないため、休日にまとめて激しい運動をするより、定期的に体を動かす習慣をつくりましょう。
糖尿病の運動療法は多くの人に有効ですが、病状によっては注意が必要です。インスリン注射や一部の血糖降下薬を使用している人は、運動によって低血糖を起こすことがあります。冷や汗、手の震え、強い空腹感、動悸、ふらつきなどが現れた場合は、すぐに運動を中止してください。
また、糖尿病網膜症、腎症、神経障害、心臓病、足の傷や変形がある人は、運動内容を調整する必要があります。発熱、胸痛、強い息切れ、めまいなどがある日も運動は控えましょう。運動前後には水分を補給し、低血糖の可能性がある人はブドウ糖を携帯します。治療中の人は、運動を始める前に主治医へ相談することが大切です。
糖尿病の運動療法には、血糖値の改善、インスリン抵抗性の改善、体脂肪の減少、筋力や心肺機能の向上など、さまざまな効果があります。ウォーキングなどの有酸素運動と、スクワットなどの筋力トレーニングを無理なく組み合わせましょう。大切なのは、一度に激しい運動をすることではなく、生活の中で継続的に体を動かすことです。治療薬や合併症によって適した運動は異なります。安全に効果を得るためにも、自分の判断だけで運動量を増やさず、医師や医療スタッフに相談しながら進めましょう。
横山医院 理学療法士 横井 宣恵