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うつ病と整形外科疾患│セロトニンとストレスのコントロールについて

【うつ病とは】

うつ病とは気分障害の1つで、うつ病を含む気分障害の患者数は2017年の時点で127万人を超えており、年々増加傾向にあります。また、経済的な影響も無視できない状況になってきており、様々な精神疾患がある中でうつ病だけでも2014年の時点で約2兆円の社会経済的損失が生じていたとされています。

 

また、うつ病の特徴の1つとして自分がうつ病かどうかを判断できないため、症状が知らない間に悪化していってしまうといった問題があります。うつ病では無気力になる、眠れない、眠りすぎてしまう、食欲がない、思考力や集中力がない、疲れやすい、物事に対する興味や喜びがなくなるなどの症状がみられます。

 

うつ病の女性のイラスト

 

【うつ病と整形外科疾患】

うつ病は誰でもなりうる病気で、整形外科疾患との関連も指摘されています。特に頚部や腰部の痛みや痺れなどが慢性的に継続する方ではうつ傾向になりやすいことがわかっており、逆にうつ病が原因で痛みや痺れなどがなかなか改善しないこともあります。

 

また、うつ病により自宅に閉じこもることが多くなると身体機能の低下をきたし、二次的に整形外科的な問題が生じてしまうことも考えられます。高齢者では、サルコペニアやロコモティブシンドロームのような不活動が原因で生じる筋肉量の減少や活動の制限などが問題となります。

 

運動不足と要介護のイラスト

 

【うつ病の種類】

うつ病は病態によって分類され、主なうつ病の種類には以下のようなものがあります。

 

・メランコリー型うつ病

いわゆる典型的なうつ病で、気分の落ち込みや食欲不振、不眠などの症状が数週間~数カ月持続します。

 

・季節性うつ病

日照時間の変化によりうつ症状が現れるもので、冬季うつと夏季うつがあり、日照時間が短くなる冬季うつの方が多くみられます。

 

・産後うつ病

ホルモンバランスの崩れや子育てに対する不安などから、感情の起伏が激しくなったり極度の疲労感を感じたりするようになります。

 

・更年期うつ病

更年期障害とともにうつ症状が現れるもので、物事に関する関心や意欲の低下、集中力の低下や抑うつ症状などがみられます。

 

・非定型うつ病

状況や場面によって気分の変化が大きくなり、外部からの刺激に対して過敏になったり疲労感や眠気を感じやすくなったりします。

 

【うつ病とセロトニン】

うつ病は、セロトニンという脳内伝達物質が不足することで生じると考えられています。セロトニンは別名「幸せホルモン」とも呼ばれ、人が幸せを感じるために必要不可欠なホルモンです。

 

セロトニンの分泌を促すためには、腸内環境を良い状態に保つことがとても重要になります。セロトニンを合成するための前駆体は腸内細菌が働かないと合成できず、腸内細菌の働きが悪ければ脳内のセロトニン量も減ってしまいます。また、人体におけるセロトニンのうち90%程度が腸に存在し、そこから脳や他の臓器に運ばれています。これらのことから、いかに腸がセロトニンと密接に関わっているかわかるかと思います。

 

元気な腸のイラスト

 

【うつ病の予防と改善のためには】

1.生活習慣

うつ病でよくみられる症状の1つとして昼夜逆転があります。これはうつ病をさらに悪化させる大きな要因の1つで、セロトニンの分泌量を低下させてしまう原因となります。セロトニンは光を浴びることで分泌量が増える特徴があるため、昼夜逆転で日光をあまり浴びない生活をしていると十分なセロトニンが分泌されなくなってしまいます。

 

セロトニンの分泌を促すためには、朝起きて日光を浴びながら15分ほど外を散歩すると良いでしょう。セロトニンはリズムの良い運動をすることでも分泌されやすくなる特徴があるため、一定のリズムで歩くことでさらにセロトニンが分泌されやすくなります。

 

日光浴をしている女性のイラスト

 

2.食事

セロトニンは「トリプトファン」と呼ばれるアミノ酸が原料となって生成されます。また、たんぱく質の分解からセロトニンを合成するまでの過程でビタミンC、葉酸、ナイアシン、ビタミンB₆といったビタミン類やマグネシウムなどの栄養素も必要になります。そのため、トリプトファンを多く含んだ食品を取り入れるのと同時に、ビタミン類やマグネシウムもバランスよく摂取することが重要です。

 

トリプトファンを多く含む食品:肉類(特にレバー)、魚、大豆製品、乳製品など

 

肉のイラスト

 

3.薬

うつ病に対してはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)などの薬が用いられます。これらの薬はセロトニンやノルアドレナリンといった脳内伝達物質の量を増やす働きがあります。

 

薬の種類によって効果や持続時間などは異なりますが、効果が強い薬ほどそれに伴う副作用も強い傾向にあるので、薬の調整は慎重に行っていく必要があります。勝手に薬の量を増やしたり減らしたりすることはリスクを伴いますので、薬の服薬に関しては勝手に個人で判断をせず、必ず担当の医師に相談するようにしましょう。

 

薬のイラスト

 

4.ストレスとの付き合い方

うつ病では、ストレスと上手に距離をとりながら生活していくことが大事になります。うつ病になってしまうと、ストレスに対して過度に弱い状態になります。適度なストレスは人が生きていくうえで必要なものですが、過度なストレスはうつ症状を悪化させてしまい、うつ状態からの回復を妨げてしまいます。

 

心の状態が悪化してしまった場合、まずは疲れた心に負荷をかける「ストレッサー」から距離をとり、心を休めることが何よりも大切になります。ストレッサーのほとんどは対人関係とされており、普段接している人と距離をとるのは勇気のいることかもしれませんが、意識してストレッサーと距離をとるような行動をとることが心の回復を図るためには重要です。

 

横山医院 理学療法士  藤平 真二

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