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上腕骨外側上顆の最新診療ガイドラインと当院の治療について

【上腕骨外側上顆炎とは】

物をつかんで持ち上げたり雑巾を絞ったりする動作で、肘の外側にピリッとした痛みが走ることを感じたことはないでしょうか。 一般的に「テニス肘」と呼ばれるこの症状は、医学用語で「上腕骨外側上顆炎(じょうわんこつがいそくじょうかえん)」と呼ばれます。 テニスをしている方だけでなく、パソコン作業が多い方、家事や育児で腕をよく使う方にも非常に多く見られる疾患です。

 

肘を痛がる女性のイラスト

 

「安静にしているのに治らない」「ストレッチをしているのに痛みがぶり返す」 このようなお悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。 実は近年、この上腕骨外側上顆炎に対する医学的な考え方が大きく変わってきています。

 

【上腕骨外側上顆炎の最新診療ガイドライン】

今回は、2024年に改訂された最新の診療ガイドラインに基づき、上腕骨外側上顆炎の「パラダイムシフト(根本的な考え方の変化)」と、当院での具体的な治療について分かりやすく解説します。これまでの常識では、痛みは「筋肉」と「骨の付着部」に生じていて、上腕骨外側上顆炎の主な原因は「手首や指を伸ばす筋肉の使いすぎ(オーバーユース)」だと考えられてきました。 手首を酷使することで筋肉の付け根(肘の外側の骨)に持続的に引っ張られる力が生じ、微小な断裂や炎症が起きることで痛みが出るとされていました。そのため、従来の治療は以下のような「炎症を抑えて休ませる」アプローチが中心でした。

 

・安静にして筋肉を休ませる

・サポーターやバンドで負担を軽減する

・湿布や痛み止めで炎症を抑える

 

テニス肘に対するサポーター

 

しかし、これだけでは「一時的に良くなっても再発する」「慢性的な痛みが取れない」といったケースが一定数存在していました。2024年の最新ガイドラインでは、神経も含めた「複合的な障害」へ と研究が進み、現在では上腕骨外側上顆炎が単なる炎症ではなく「神経の過敏化や組織の変性を含めた複合的な障害」として捉えられるようになっています。これが大きなパラダイムシフトです。また、長引く痛みの背景には以下のような要素が関係しています。

 

・神経の過敏化:神経や脳の働きが変化し、実際の組織の状態以上に痛みを強く感じやすくなる状態

・腱の変性(血流低下):腱への血流が低下し、組織の質が落ちて修復しにくくなっている状態(単なる炎症ではない)

 

【当院の上腕骨外側上顆炎に対する治療】

当院における具体的な治療アプローチとしては、この新しい考え方に基づき「休ませる」だけでなく、神経の状態を整えて傷んだ組織の再構築を促す多角的なアプローチが重要だと考えており、以下の治療を標準的なアプローチとして組み合わせて行っています。

 

[プロロセラピー(増殖療法)]

高濃度のブドウ糖などをあえて注射し、組織に一時的に軽微な刺激を与えることで、身体が本来持っている「自己治癒力」を強力に引き出す治療法です。特に、慢性化して修復が止まってしまった腱に対して再び修復のスイッチを入れ直すことで、組織の強度を根本から高めることが期待できます。

 

[体外衝撃波治療(ESWT:収束型)]

当院では、エネルギーをピンポイントで深部に集中させる「収束型」の体外衝撃波を採用しています。痛みを伝達する自由神経終末を変化させて即効性のある除痛をもたらすだけでなく、血管の新生や組織再生因子の放出を促すことで、変性した腱を正常に近い状態へと導きます。難治性の痛みに対して非常に有効な手段です。

 

当院で使用している体外衝撃波治療器

 

[物理療法(超音波・ハイボルテージ)]

超音波を用いて組織の深部に熱を与えて、血流を改善したり細胞の活性化を促したりして微細な損傷の修復を早めます。また、ハイボルテージ(高電圧電気刺激療法)により深部の筋肉や過敏になった神経に直接働きかけ、除痛を目指します。

 

超音波治療器

 

ハイボルテージ

 

[リハビリテーション(運動療法)]

最新の知見で最も重要視されているのが「適切な運動療法」です。単に安静にするのではなく、痛みのない範囲で筋肉や腱に適切な負荷(刺激)をかけることで、組織の再構築を促します。また、手首への負担を減らすため、肩甲骨周りを含めた「全身の正しい使い方」を身につけ、再発を防ぎます。

 

※ステロイド注射について:即効性はありますが、繰り返し使用すると組織を弱くするリスクもあるため、当院では状態を見極めて実施するかどうかを慎重に判断しています。

 

【おわりに】

「テニス肘は治りにくい」と諦めていた方も、医学の進歩により新しい治療の選択肢が広がっています。痛みの原因が「神経」や「組織の質」の変化にあると分かれば、アプローチの方法も変わってきます。 当院では、プロロセラピーや収束型体外衝撃波、そしてリハビリテーションを組み合わせ、多角的なアプローチを行っています。

 

横山医院 理学療法士 明楽 豪

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